今日は「発達障害の薬物治療」について解説します。
知的能力に不得手なところがあったり、逆に非常に能力が高いところがあったりと「凹凸」があるのが発達障害です。
・ASD(自閉スペクトラム症)
コミュニケーションが苦手、こだわりが強いなどの特性がある。
・ADHD(注意欠如・多動症)
不注意、衝動性が強い、多動である。
・LD(学習障害)
読字障害、書字障害、算数障害
これらが少しずつ重なる部分があるのが発達障害の特徴です。
純粋なASD、純粋なADHD、純粋なLDという人もいますが、重なり合っている人の方が多いです。
基本的にはADHDの薬のみ
知的能力の凹凸の隙間を埋めるための薬物治療にはどのようなものがあるかというと、基本的にはADHDの不注意、衝動性、多動性を抑える薬のみになります。
ASDの過敏性をカバーする薬はありますが、基本的には薬はADHDの症状にしか効きません。
ASD特有のこだわりや、コミュニケーションの不得手さに対して使える薬は原則ありません。
ADHDの薬
ADHDの薬は4種類しかなく、大人が使える薬は3種類です。
・コンサータ(一般名:メチルフェニデート徐放剤)
少しずつじわっと出る薬を「徐放剤」と言います。一気に出る薬は「リタリン(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)」で、ナルコレプシー(慢性の過眠症)の治療に使われます。
一気に血中濃度が上がる薬は依存性が出てくるので、コンサータは少しずつじわっと出てくるようになっています。
飲んだその日から効果があります。
集中力が高まることで、ミスが減ったり衝動的になるのが抑えられたりします。
・ストラテラ(一般名:アトモキセチン)
今はジェネリックも出ているので、アトモキセチンという名前で処方されることも多いと思います。
ストラテラは抗うつ薬(ノルアドレナリンの再取り込み阻害薬)に似ています。
飲み続けることで体質改善をしていきます。飲み続けることで集中力の高い体質に変わっていくというイメージです。
ですから、飲んですぐに効くのではなく、飲み続けることでゆっくり体質が変わっていきます(2週間以上)。
・インチュニブ(一般名:グアンファシン)
ジェネリックはまだ出ていないので、インチュニブという名前で処方されます。
インチュニブは交感神経系を抑制します。
ADHDの人は衝動的に動きやすい、カッとなりやすいところがあります。それで不安が高まったり怒りっぽくなったりトラブルが増えるのですが、その「わっ!」となる感じを抑えてくれます。
速効性があり、飲んだ日から効きます。
・ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
アンフェタミンのプロドラッグというもので、飲んで血中で分解されるとアンフェタミンという成分に変わります。その成分が集中力を高めるという薬です。
飲むと12時間ほど効果が続き、速効性があります。ゆっくり代謝されるので徐放剤と同じような作用が起きます。
ビバンセの適応があるのは6~18歳の子供のみです。
コンサータとビバンセは依存性があると考えられています。
これらは登録医でないと処方できませんし、処方は厳密に管理されなければいけません。覚せい剤と似ているので、薬物乱用しないようにきちんと管理されています。
・その他(リスペリドン、アリピプラゾール、抑肝散など)
その他に過敏性を取る薬としてリスペリドン、アリピプラゾールがあります。
衝動を抑える漢方としては抑肝散が有名です。
今回は、発達障害の薬物治療について解説しました。
コンサータ、ストラテラ、インチュニブのうちのどれを使うかを検討しつつ、不得意さをカウンセリングやSST(ソーシャルスキルトレーニング)などで改善していき、凸凹の隙間を埋めていくというのが治療のイメージです。