今日は「診断は、双極性障害II型か境界性人格障害か発達障害のどれかだと思います」と言われる、医者によって診断が変わる理由を解説してみようと思います。
診断の断定を避けながら治療する
今の不調感、気分の波、コミュニケーションの取りづらさ、人間関係の難しさがどこから来ているのかというときに、よく僕らは「心理的な問題(人格障害)」、「知的能力の問題(発達障害)」、「脳病(双II)」から来ているのではないかと想定しますが、これらのどれから来ているのかわかりにくいケースがあります。そのため、人格障害なのか発達障害なのか双極性II型なのか、となってしまいます。これが今の医学の限界だったりします。
例えば、双極性障害II型だと躁エピソードがはっきりしているということになるのですが、実際患者さんの話を聞くといまいちわかりにくかったりします。主観的な体験を話すので、本人が双極性II型だと思って話すとそのようなエピソードになりますし、自分は境界性人格障害だと思っていればそのような語りになります。医師の側も「この人はこういう診断ではないか」と思って聞いていると、そのようなエピソードばかり集めてしまうことがあります。ですので曖昧なところは曖昧です。
→診断の断定を避けている
「診断の断定を避けている」という診断になります。ここら辺のどこかかもしれないけれど様子を見ながら治療しています、ということです。
→双極の悪化リスクや発達の機会損失の考慮
双極のうつの悪化リスクを常に考えたり、発達障害だったらトレーニングや治療の機会損失がないように考慮したりします。3つの障害をカバーするような治療方法を考え、副作用のない範囲で薬をアレンジします。結構難しい治療です。ある意味、曖昧な診断で曖昧な治療を続けていくということです。
→今、悩んでいることをサポート
そのような中でも具体的に扱えることはあります。
「遅刻が多い」「会社に行くことが難しくなった」といったことならば休職をすすめることもありますし、対人関係が難しいのであれば、カウンセリングをしながらどこに問題があるのか、どのようなところを伸ばせば良いのかと考えたりします。
双極の場合はカウンセリングでかえって悪化させることもあるのでややこしいところではありますが、その人の状態を見ながらそこに合う医療資源を考えます。
「でもちゃんと話を聞けばわかるんじゃないの?」「問診が足りないんじゃないの?」と言われたりもしますが、1時間聞いたらわかるかということでもありません。患者さんも疲れてしまいます。診察をしながら診断を見極めていくという感じです。診察を続けていくと、双極だったら気分の波が見えてきたりします。
時間をかけていくと見えてくることもありますが、時間をかけてもこちらも人間なので完璧にわかるわけではなく、診断の断定を避けつつどこかで診断がはっきりするというパターンもあります。
悩みの解決は医学だけなのか?
・様々なアプローチが可能
診断をして薬を飲めば解決と思う方もいらっしゃいますが、悩みの解決は医学だけではなく様々なアプローチが可能なのでその人に合った解決策を考えることが重要です。とはいえ薬のコスパは良いです。逆に言うと薬でしか解決できないこともあります。
・独力よりサポート
独力でやっていくよりもサポートをしっかりした方が良い人なんだろうなと想像したりします。
・心理葛藤やジレンマを明らかにするよりも、具体的な生活指導
・上の3つの疾患を同時に診つつ治療していく視点
・本人の理解力や立場に合わせて説明を変える、増やす
診断の断定を避けて鑑別疾患を常に頭に入れながら、毎回毎回診断し直しているような感じです。
毎回毎回話を聞いて、前回までの様子と比べて診断をし直してみて、つかない場合も多いけれどつかないなと思いつつ、どの疾患であっても患者さんにとって致命的なミスがないように、機会損失がないように検討するというのがこのようなパターンの治療になります。わかりにくい話だったかもしれません。