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毒親かと思ったら(親子で)発達障害でした

01:05 「毒親」
03:08 「親ガチャ」
04:21 子どもの人生を支配する
10:22 役割の変化を受け入れられない

今日は「毒親かと思ったら(親子で)発達障害でした」というテーマでお話しします。

コメントや診察で、自分の親はどんな人か、酷い親だなと思っていたけれども、精神医学を知ることで、親にもこんな事情があったんだな、親は実は発達障害だったんだなということがわかりました、と言ってくれる患者さんは多いです。

それがわかったから少し親を許せるようになりました、という人もいて、トラウマが少し消えたり治療に前向きになれたという方も結構います。
今回はそういう話をします。

「毒親」

「毒親」は現在のバズワード、流行りの言葉です。
「子どもの人生を支配し、子どもにとって毒になる親」ということのようです。
これはネットで調べました。
簡単に言えば「悪い親」ということです。

日本社会は儒教文化なので、親を尊敬しなければいけない、信頼しなければいけない、愛さなければいけないと思うわけです。
親孝行しなければいけない、など社会全体が洗脳されています。

でも、悪い親、子どもにとって良い親でない人たちがいます。
それを伝えるためにも「毒親」というショッキングな言葉を使うのかなと思います。

ただ、僕はこの言葉は好きではありません。
今どきの言葉なので皆さんに興味を持ってもらうために使いましたが。
好きではない理由は、親を否定しても何も良いことはないからです。

不十分な親、あまり養育を充分にできない親ということはわかりますが、最初から「毒親」とカテゴライズすることで治療上良いことはありません。

親に対して憎しみをぶつける、怒りを自覚して解放するというのは治療上ありますし、有効ではありますが、次の瞬間に後悔をすることになります。
「毒親」と言うことで後悔してしまうこともあり、罪悪感に後で苦しめられる可能性があるため、最初から毒親という言葉は使わずに「許せなかった」ということだけで充分ではないかと思います。
毒親という言葉が好きではないのは、治療上上手くいかない感じがするからです。

「親ガチャ」

また、最近の言葉としては「親ガチャ」というのがあります。
「親ガチャ当たり」とか「親ガチャ失敗」というのがあったりします。

こういう言葉を見ると日本はいよいよ格差社会になってきており、親の影響でしか教育を受けられない、出世できないということが関係しているような気もします。

僕はよく「孫文化」と言っているのですが、親の世代が多すぎて子どもたちが少ないから若い人たちが社会全体の孫のようになってしまって、可愛がってもらうのが当たり前、可愛がってもらわないと意味がないという形になっており、老人文化と孫文化と僕は呼んでいますが、その象徴かな、という気がします。
自分の責任、自分の足で立って歩けない。
でもそれはそういう社会になっているから社会のせいだ、という意見も聞こえそうです。

子どもの人生を支配する

子どもの人生を支配するというのが、ASD、自閉スペクトラム症的なもの、発達障害のこだわりから来ているのではないかということが多いということです。

家に帰ったら必ず手を洗いなさいというのは普通だけれども、土日も絶対こうしなさい、我が家はこういうルールだから絶対やりなさいと子どもに自由を与えない。
8時~9時の間は絶対に正座で勉強しろ、これは父親が作ったルールだから破ると殴られる。それに臨機応変さがなく、風邪のときにも勉強させるなどがあると、発達障害的なこだわりかなと思います。

子どもにとっても「これは支配だ」と思うことがあります。
どうして自由にさせてくれないんだ、お金がないんだったらアルバイトさせてくれ、悪いアルバイトさせてくれよ、それは自分たちの自由だろと言う子どもがいるのですが、親には親の責任があってそれは過干渉ではなく世間一般の常識の範囲であっても、子どもがわからないパターンもあります。
それは子どもが発達障害で自分のルールを重視するために親のルールが疎ましく、過干渉だと錯覚しているわけです。

ですが、子どもが発達障害だから親が毒親に見えるパターンではなく、今回は毒親が発達障害だったというパターンを中心にお話しします。

実際色々なパターンがあるようです。
否定タイプ、過干渉・過保護タイプ、無関心タイプ、嫉妬タイプというのがあります。

否定タイプというのは子どものことを何でも否定するタイプということです。
過干渉・過保護というのは言葉の通りで、子どものやることに過干渉だったり過保護で甘やかしてしまう、逆に全然無関心なタイプ、子どもに対して嫉妬してしまうタイプ、友達やライバルのようになってしまうパターンというものがあります。白雪姫でいうところのお母さんと娘の関係です。
娘が綺麗になると母親が嫉妬してしまう感じです。

・否定タイプ

否定タイプは、産まなければ良かった、あるいは子どもの夢を潰すパターンで、○○はしない方が良い、あなたは運動神経が悪くてスポーツ選手になれないんだから最初から勉強しておきなさい、あなたはバカだから勉強せずに楽しくやっておけば良い、など子どものやる気を削ぐようなパターンです。

これは何かというと、そういう人かもしれないけれども、発達障害の可能性もあります。
相手は子どもなので、子どもとして会話してあげなければいけないのにそれがわかっていません。

子どもが勉強していて、「今回100点取ったよ」「絶対に東大へ行って医者になって宇宙飛行士にもなるんだ」と言っても親は否定しないものです。
頑張れと普通親は言うものです。
絶対できるから頑張れよ、と褒めるものです。
そこを医者と宇宙飛行士の両立は可能なのか、といちいち言うのは子どもの話に大人気ない感じがします。そういうことです。たまにいます。

・過干渉・過保護タイプ

過干渉・過保護というのは、自他の区別や境界が緩くてよくわかっておらず、子どもは自分の所有物のように考えています。
子どもが他人だということがわかっていません。
だから子どもを着飾らせたり、お金をかけたり、自分のお人形さんのように仕立てたりします。

「こうするのが良い」と言って、自分ができない努力を子どもに押し付けるということもあります。
自分は子どものときに勉強ができなかったけれどお前は勉強すべきだ、一日8時間勉強しろと言ってやらせます。
子どもは親の言うことを聞いてしまいます。
聞くからより楽しくなり、どんどん過干渉になるというパターンがあります。
これが発達障害的な強迫性から来ることも結構あります。

また、マイルールやこだわりが強く、それを押し付けます。
夕飯は家族全員で食べるべき、夕飯には絶対に味噌汁がなければいけない、野菜から食べないといけない、など。
中学生や高校生など部活で帰宅が遅れたりすると、父親がめちゃくちゃ怒って殴るなどは毒親というよりは発達障害的なこだわりなのではないかということがあります。

・無関心・ネグレクト

無関心というのは、興味の偏りがあり、子どもの勉強には関心がない。
子どもが忘れ物をしても関心がない、学校の先生から忘れ物のチェックの連絡を受けても全然チェックをしない、というようなことです。

過干渉や無関心はよく見られるパターンだと思います。
大なり小なりあったりします。

役割の変化

発達障害の人のポイントとして、子どもが生まれると男性は父親、女性は母親にならなければいけない、その役割の変化を受け入れなければいけない、結婚してもTVゲームをしていた男性も、子どもができたら、TVゲームをしていれば家族が回らなくなるのですが、いつまで経ってもゲームに夢中、夫としての役割を果たさない。これが発達障害的です。

夫に役割の変化を受け入れられない、役割の変化に気付かないということがあると、奥さんは、この人は全然子育を手伝ってくれない、何でうちの夫はいつまで経っても子どもままなんだろう、ということでカサンドラのようになってしまいます。
自分の好きなことだけやっていてはダメなのです。

当たり前といえば当たり前ですが、子ども中心になるのは仕方ありません。
それが受け入れられないということがあるのかなと思います。

話を聞いていくと、そういえば祖父母もそうだった、ということが見えてきます。
自分の両親が子どものときも同じような扱いを受けていたらしい、そういえば祖父母も発達障害的な要素があったのかな、というのもよく話題になります。

毒親かと思ったら発達障害でした、というのは良くある話です。
臨床上そういう話はよく出ます。

パーソナリティ障害だと思ったら発達障害でした、アルコール依存症、ギャンブル依存症かと思ったら発達障害でした、何かと最近は発達障害的なものが語尾に付くことが多いです。
発達障害は現代の精神科医療のキーワードなんだろうなと思います。
親子関係や毒親についても同じことが言えるという感じです。

親のことがちょっと理解できると、親がした仕打ちは許されるものでなくても、少し治療の参考になるのではないかと思います。

今回は「毒親かと思ったら発達障害でした」というテーマでお話ししました。


2022.1.28

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