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ストレスを利用する生き方

01:29 ストレスとは?
02:43 体内で何が起きている?
07:06 ストレスを味方につける
08:52 どう生きるかを考え直すチャンス!?
13:26 世の中は結局「運」

本日は「ストレスを味方につける生き方とは?」というテーマでお話しします。

よく日常生活の中で、ストレスを利用しよう、ストレスを逆に味方につけて仕事に活かそう、勉強に活かそう、そういうアドバイスをする上司や先輩、ご両親がいらっしゃると思います。
何となく言わんとすることはわかります。

ちょっとプレッシャーがかかった方が良いパフォーマンスが出るよ、という感じの意味合いで使っているのかなと思うのですが、実際何をする時にもリラックスしたときは良い成果が出ず、ちょっとプレッシャーがかかっている時の方が、スポーツにしろ勉強、テストにしろ、演技や音楽のパフォーマンスにしても良い結果が出せます。

だからそういう意味合いで使っているのかなと思うのですが、実際どういうことなのか、と考えみると何を言っているのか良くわからない言葉です。
今回はこの言葉を解析してみようと思います。

ストレスとは?

「ストレス」はそもそも何かというと、ウィルスや細菌が体の中に入ってくるときの反応を「ストレス反応」と呼びます。
ストレス源は何かというと、その場合はウィルスや細菌になります。
体の中に異物が入ってきて、それを撃退しようとして起こる変化をストレス反応と最初は呼んでいました。

でも、例えばライオンやヘビに襲われたときにも同じような体の反応が起きます。
他にも不安や落ち込み、うつっぽいときにも同じようなストレス反応が起きたりします。

実際のウィルスや細菌だけではなくて、襲われるかもしれないという物理的な恐怖、そしてメンタル的な恐怖、我々の幻想、脳内で再現される恐怖に対しても同じような反応が出ます。
そのためストレスというのが幅広い意味になったという感じです。
単純にストレスという言葉が日常語になって広がったわけではなく、実際には体の中で起きる反応も同じです。

体内で何が起きている?

どういうことが起きるのかというと、視床下部・下垂体・副腎反応が起きます。
難しい言い方をしますけれども、実際に難しいです。
僕も脳の解剖がよくわかってないのです、難しくて。
みなさんと勉強しながらお伝えします。

脳の下の方にあるのが「下垂体」です。
ちょうど上顎、口の中の上側、骨じゃない柔らかいところにあります。
だから下垂体腫瘍のオペをするときには口の方からオペをします。

そして下垂体よりもちょっと上にあるのが視床下部です。
そのちょっと上にあるのが視床です。
僕はあまりよくわかっていないので、詳しく知りたい方はインターネットで検索してください。
だいたいその辺りだと分かってもらえたらいいです。

脳内にある視床下部が反応して、信号を出して下垂体へ信号を送り、下垂体からホルモンを出して副腎で副腎反応が起きるのを「視床下部・下垂体・副腎反応」と言ったりします。

下垂体というのはもう少し言うと、色々なホルモンを出す場所なのです。

成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、性刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモンが出ます。
ホルモンがいっぱい出るということです。

そして、下垂体から副腎反応を起こします。
副腎は腎臓の脇にあり、元気を出すホルモンを出す臓器です。

ストレスが来たら視床下部が反応して、下垂体にホルモンを出せと刺激を出し、下垂体から副腎皮質刺激ホルモンを出して、副腎から元気を出すホルモンが出る、ということです。

その結果、コルチゾールとアドレナリンが増えます。
コルチゾールはホルモンで、炎症を抑えます。
アドレナリンは元気を出させるホルモンです。

結果的に炎症を抑え身体を活性化させるので、疲労感を減らすということが起きます。
ストレス反応は何かというと、疲労を抑える、疲労を感じさせなくさせる反応です。
だからそもそも味方につけているわけです。
ストレスはもう味方なんです、最初から。
ストレス反応がなければすぐだるくなって、頑張らなくなります。

ストレスを味方につける

僕は動物番組を観るのが好きなのですが、サバンナで襲われている動物たちは、ライオンに襲われても早めに諦めたりします。
どうしてコイツらはすぐ諦めんねん、という感じじゃないですか。
あれは彼らがストレスに弱いからなのです。

人間はストレスに強いのです。
持久力があって走って逃げようとする、最後までもがくことができる、そこが他の動物と違います。
それが人間らしさであり、そもそも人間は疲労を抑えてストレスを味方につけて働いているのです。
何度も言いますが、そもそもストレスを味方につけているんです。

日常語でいう、ストレスがちょっとあった方が良いよね、緊張している方が良いよね、というのは、アドレナリンが出るのでパフォーマンスが良い、ということです。
リラックスすると身体が弛緩してアドレナリンの量が少ないので、あまり良いパフォーマンスが出ないということなのかなという気がします。

それは局所的に見た話です。
瞬間瞬間においてはストレスを味方につけた方が良いけれど、生き方というとどうなのかな、という気がします。
生き方となってくると長期間ストレスに晒されているということなので、疲労を取る暇がない、ということです。
だから潰れてしまいます。

一瞬であれば火事場の馬鹿力みたいな形でストレスを味方にするというのはアリなのですが、慢性的なストレス状態になると疲労が抜けないので、結果的に適応障害やうつ病になるということです。

どう生きるかを考え直すチャンス!?

ストレスを味方につける生き方とはどういうことかというと、そんなもの無いよ、と言ってしまえばそうなんですが、ネットで「ストレスを味方につける生き方」を検索してみると、ストレスをきっかけに生き方を見直そう、というようなことを書いている記事が多いです。
確かにそうかなと思います。

ストレスを感じているということは、どう生きるか考え直すチャンスなんです、ポジティブに考えると。
ネガティブに考えると、ストレスを感じて疲れているから仕事を減らそう、なのですが、ポジティブに捉えると、どう生きるか考え直すチャンスなんだ、ということになります。

人間というかあらゆる活動はそうなのですが、段々雑用、仕事が増えていくのです。
僕もそうです。
クリニックを始めて慣れてきたと思ったら別の仕事を始めて、人を雇ってみるとか、臨床以外にもYouTubeをやってみたり。

YouTubeに慣れてきたと思ったら、YouTubeの雑用が増えます。
YouTuberの会をやって、みんなでノウハウをシェアしたり、倫理的に違反を犯さないように相互監視するようにしたり。
YouTuberの会ができたと思ったら、そこから指導するという雑用というか楽しみが増えたりします。

何でもそうです。
趣味だと思ったこと、ちょっとバスケットが楽しいと思ってやっていたら、チームを組み、チーム練習が始まって、皆のスケジュール調整が必要になったり試合を組んだり。
どんどんどんどん雑用が増えていきます。

そうするとどんどんストレスを感じます。
限界だということになります。

そうすると今度はどう生きるか考え直すチャンスなんです。
つまり、やらない決断をするのです。
自分にとって大事なことだけに絞ります。

「やっぱり僕は精神科医なので精神科の臨床に絞ろう。益田はそれだけを頑張るんだ」
でもまた増えていく、というのを繰り返していきます。

これは生き方のみならずどんなことでもそうです。
科学理論もそうだし、カップラーメンの種類でも何でも、どんなものもそうです。
何か流行ってきたらバリエーションが出てきて、音楽もそうだし映画もそうだし、アニメもそうです。

増えすぎたら減ります。減って絞られる。
そのままついえるかと思ったら次の世代が増えてくる。
こういう盛衰があります。

生き方に関してもそうで、ストレスがあったときにどうするのか、出世よりもライフワークバランスなのか、家族の時間を重要視するのか。
家族の時間も大事だけれど、自分は仕事が好きだから今までやっていた掃除をちょっと高いけれどロボット掃除機に替えよう、そうすることで家事の雑用を減らそう、色々なことがあります。
やらない決断をするということが重要かなと思います。

ストレスというのはそういう機会です。
ストレスを味方につける生き方というのは「やらない決断をどこかでする」ということです。

でもそれを言うと患者さんは結構悩みます。
じゃあ何を残せば良いんですか、自分がこれが大事だと思ったものが失敗だったらどうするんですか、と言われます。
自分がこれが大事だと思ったものが実は大事じゃなかったことってありますよね、と言われます。

決断をした後、失敗することは結構あります。
当たることもあれば外れることもあります。
そういうものです。

自分がどんなに考えて色々な情報を集めて、よしこれだ!と思って決めたことも失敗するときには失敗します。そういうものです。

世の中は結局「運」

世の中は結局「運」です。
そういう意味も含めて運なんです。
塞翁が馬、というやつです。

塞翁が馬は中国の故事です。
塞翁さんの馬が逃げたんです。
逃げたら村人が「あなた損したね」と言うのですが、「これはめちゃくちゃ良いことが起きる前兆だ」と言うのです。
今度はその馬が牝馬を連れて帰ってきます。
ラッキー、馬が二頭に増えた。
「あなたはすごくツイてますね、あなたが言った通りですね」というとお爺さんは「いや、これは不吉の前兆に違いない」と言うのです。
今度は息子がその馬に乗っていると落馬して骨を折るのです。
昔の人が骨を折るのは今と違って、ギブスなどない時代ですし、きちんと治すとか手術するとかがない時代ですので、きっと折れたら変な角度でくっついてしまうのでしょう。
そうすると障害者になってしまいます。
「やっぱりあなたの言う通りです」と村人が言います。
「さすがですねお爺さん。あなたの言う通り馬が増えたのは良くないことだったんですね」
すると今度はお爺さんが喜ぶのです。
「これは幸運の前兆に違いない」
そうすると今度は戦争が起きて、若い男は兵隊としてみんな連れて行かれてしまいます。
しかしケガを負っている息子は村に残ることができました。
という話です。

その結果が一瞬悪いことに見えてもそれが幸運につながるかもしれない。
世の中はそんなものでよくわからないのです。

めちゃくちゃ賢い人たちがめちゃくちゃ出世しているかというとそういうことはありません。
たまたま幸運を掴んだ人たちが、自分の実力のように言っていますが、それも嘘です。

自分の判断で物事が上手くいくほど運の力は弱くはありません。
世の中はもっと賢い人たちがたくさんいて、争って戦っています。
でも「流れ」というのは人間一人の力ではどうしようもないものですから、決断だけでは変わりません。
そういうものかなと思います。

そうは言っても、じゃあ何でも良いのかというとそういうわけではないので、やらない決断というのはしなければいけないのですが、最後の最後ではそういう決断をするときには、「所詮は運なんだな」と思いつつやるのが良いんじゃないかなと思います。

今回は、ストレスを味方につける生き方とはどういうものかについて、ストレスはどういうものかからお話ししました。


2022.2.15

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