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機能不全家族について解説します

01:23 家族は「チーム」
04:03 家族のライフサイクル

今回は「機能不全家族」というテーマでお話しします。

「家族」とはどういうものなのか、あまり考えたことがない人が多いのではないでしょうか。

家族は、生まれたときからその空間にいるので、客観的にどのようなものか、人の家族はどういうものか、いまひとつ考えにくいものです。
自分のことさえよく分からない、客観視しにくいのに、ましてや家族のことなど客観視しにくいわけです。

自分が所属しているものは、あまり客観視できないものです。
自分の会社はどんな会社なのかなど、意外と考えたことがない人が多いと思います。

家族とはかけがえのないものであるし、それぞれ違うのですが、そもそも家族とはどのような機能を持つ集団なのかということは考えられています。

「家族療法」と言ったりしますが、家族とはそもそもどういうものか、どういうシステムで動いているのか、そのあたりを一度見直してみることは治療上とても大事なことなので、今回動画でお話ししようと思います。

家族は「チーム」

「機能不全家族」は、家族として機能していないということです。
精神科の患者さんのご家族が機能不全家族だったケースはかなり多いです。

それが当たり前のように思っているので、ちびまる子ちゃんとかサザエさんとかクレヨンしんちゃんとか、アニメの一家団らんのような家族像を見て、あんな家族はいない、と思っている患者さんが結構多いです。

一般的な家族像だということでアニメとして成立しているのだけれども、そしてみんな共感をして面白いね、ウチと同じねと思いながら見ているのだけれども、精神科の患者さんにとってはすごくファンタジーのように見えていることが多いようです。

それが大人になってもすごくいびつで、頭では理解しているのですが、体感的にあれが普通だとは思えない、自分が結婚してもなおそれが全然分からないという人は結構いたりします。

家族というのはそもそもどういうものかというと、まず「チーム」なのです。
一つのシステムであり一つのチームです。
会社もチームだし、どんな組織もチームなのですが、家族はよりプライベートで密着度の高いチームです。

チームとして何をしているのかというと、まず一つは子育てや教育です。
二つ目に経済、経済活動やお金を稼いでくるということです。
あとは娯楽です。お金を使うということです。
これをみんなでやる。みんなで映画を観るとか、楽しいことをする。
お金を稼ぐ、お金を使う。

あとは扶養と介護です。
病気の人や老人をケアするという機能を持っています。

日本人には馴染みないかも知れないし、庶民には馴染みないかも知れませんが、宗教的機能や社会地位を引き継ぐという機能もあります。
一家代々やるといったことは、こういうことです。
歌舞伎などもそうですし、家が経営をしていると息子に継がせる、宗教的な意味というのもあるかなと思います。

これらの機能を果たさなければいけないのですが、果たせてないというのが「機能不全家族」の特徴です。

家族のライフサイクル

家族も集団、組織なので、生まれた後に消滅していきます。

基本的には核家族なので、核家族モデルですけれど、ちなみにこの話はウィキペディアから取ってきました。
ウィキペディアの情報から取ってきたのですけれども、ウィキペディアの情報を自分なりにアレンジしています。

まず一人いて、一人の状態からカップルができて婚姻契約を交し、子どもが生まれ、子どもが思春期になり独立し、片割れが亡くなる、というのが流れです。
これが家族のライフサイクルと呼ばれるものです。

その一個一個の状態に、どこでつまずいたのか、どこで問題が起きたているのかを考えることが重要です。

一人でいるときに、独立・自立した個人でいるのか?
一人でいるときに、ちゃんと自立しているのか、ということが結構大事です。

一人暮らしをしているとか、一人でちゃんと大人として社会人としてやっているということが大事で、そこの問題をクリアせずに結婚してしまうと、共依存の問題が生まれてしまいます。

一人では立てない同士が支え合っている、それは一見美談のように見えてあまり美談ではなくて、互いに支え合っているのでどちらかのバランスが崩れると一気に崩れます。
半人前同士がくっついて辛うじて一人前の体を成していると、良い時は良くても上手くいかない時には破綻してしまいます。
仲が悪くなったときにどうするのか、今もカップルでいる必要があるのか、ということもポイントです。

では、その問題は片付きました、上手くやりました、互いに個人として上手くやっているし、カップルとしてもきちんと協力しあえるようになりましたというときに、次は子どもが産まれます。
子どもが産まれてくると、その子どもにエネルギーをしっかり向けられるのかということがあります。

お母さんが育児を放棄する、旦那さんが育児を放棄する、ネグレクトになってしまうと上手くいかない。
子どもというのは自我の境界が緩く、親とすごくくっついています。
喜ばしいことですが本当に大変で、自分を犠牲にして、自分の使える時間やエネルギーやお金を犠牲にして、ちゃんとここにエネルギーを投資できるのかというのが大事なポイントです。

良くないケースだと、夫婦仲が悪くて子どもがお母さんの愚痴の聞き役になっているとか、まだ子どもが小さいのに甘えることができずにお母さんのケアをする、お父さんのケアをする、お父さんが怒って家がピリピリした状態で気まずい雰囲気の中、子どもが親に機嫌を取るようなことをするとか、そうなると破綻していたりします。

子どもが大きくなってくると、子どもの自我がないとは言わないですが、思春期を迎えてから第二の自我が芽生えてきます。
そこからが大人の階段に入っていくタイミングなのですが、人間は二度生まれると言われています。
二度目の誕生は思春期の入り口なんです。
そうすると、非常に混乱するのです。

急に分かることも増えるし、世の中何なんだという感じで、今まではお父さんとお母さんに密着していて、学校に密着していて、友だちと密着していて、自分で考えるというよりは雰囲気で動いたりすることも多い中、突然二回目の生まれをもって混乱します。気づくこと、見えるものが多く、これは何なんだとなります。

親と自分は別だし、別じゃないと今度は嫌だし、イライラするし、脳は急に大きくなるし、ホルモンのバランスは崩れるし、めちゃくちゃなんですよね。

このめちゃくちゃを家族はきちんと抱えられるのか。

自分たちの問題ではない、自分たちの混乱ではない他者の混乱なのです。親から見たら子どもの混乱というのは。
それを、他人の問題を他人としてきちんと抱えられるのか、というのが大事です。

逆に母子密着みたいにくっついてしまって、お母さんが子どもの悩みを取ってしまって一緒に悩んでしまうほどくっつくと自立を妨げてしまうので、適切に抱えられているのかというのがポイントかなと思います。

逆にヤングケアラーの問題など、もういいでしょ、中学生になったんだからお前は自分でできるだろ、ということで家のことを手伝えとか自分の時間を与えられないのも機能不全家族の問題です。

つまり子育て・教育の機能がきちんとできていない、扶養・介護の問題を親たちが放棄して全部子どもがやってしまうということがあったりします。

その後、子どもは自立します。
自立するときに、老夫婦が残ります。

そのときに自立を妨げず、しかし協力はできるか、ということがあります。
子どもはめちゃくちゃなんです。

家から出ていく、金はよこせ、とめちゃくちゃなことを要求するわけです。
それを妨げずに協力してあげるのが、一応やらなければいけないことのようです。

ただこれも結構難しくて、カップルがきちんと連携が取れているのか、愛情関係がきちんとあるのか、ということが一つのポイントです。
子どもが本当に自立できるのか、ということもあります。
経済的自立は今はすごく難しいです。

一人暮らしができるのか、東京の家賃は高いですから、一人暮らしできるのですか、あなたの稼ぎでできるのですか、結婚しても子育てできるのですか、というのはありますね。
夫婦共働きだから、本当に二人だけでできるのですか、ということはあります。
なかなか難しいですよね。

だから核家族が理想、理想というか核家族の段階から、今は令和の時代になって核家族のあり方が見直されているので、必ずしもこの形になるわけではないですが、何が良い形になっていくのかはまだ分かりません。
でも子どもが親から自立するタイミングということです。

結構ここも難しくて、モラトリアムが延びているのです。
30歳くらいまでは、親離れが色々な意味でできにくいという時代なのかなという気がします。
もちろん親離れをすぐする人もいますし、家庭の事情によっては親離れをせざるを得ない早熟な子どももいるかもしれませんが。
その場合は、機能不全家族のある種の問題を抱えているのかな、と思ったりもします。

最後の問題として、核家族の老後というのも今日では新しいあり方です。
田舎に帰らない子どもたち、ですね。

東京に出たまま田舎に帰らない、年老いた親は一人暮らしをし、ヘルパーさんをつけて遠距離で介護するという形も今は普通になっています。
こういう問題も社会的な問題としてどう考えるのか。
それは機能不全家族なんですか、ということもあります。

二人で暮らしていけるように、老人ホームに入れるように貯金しなかったら、それは機能不全家族なんですか?
何かよく分からなくなってきます。

システムと考えるとそうかもしれませんが、それだとハードルがキツすぎるでしょということになると思うので、これもまた一つの精神医学的な問題でもあるのですが、社会学、政治学的な問題でもあるのかなと思います。

ざっくり話しましたが、精神科の臨床をしていく中で、患者さんの家族はどういう家族だったのか、親子関係はどうだったのか、時期に合わせて適切な対応をしていたのか、できていなかったのは何が原因だったのか、母親なのか父親なのか本人なのか、それとも全員の問題なのか、色々考えることはあります。

嫁姑問題もしかり、障害のある兄弟姉妹がいるとか、そういう問題かもしれない。
まったくプレーンな家族、まったく何の問題ない家族というのはあり得ません。
家族の果たさなければいけない機能はこれだけ沢山ありますから、全部が満足のいく平均値を取るということは不可能に近いので、それぞれの家族にそれぞれの問題があると思います。
でも問題があるからといって全員が精神科に通院しているわけではありません。

問題がありながらもこの患者さんはどうして通院まで至ったのか、ということを考える必要はあるのかなと思います。

機能不全家族だからといってみんなが精神科の患者になるわけではない、だけどこの患者さんは機能不全家族の元に育って、そして病気になった、ということを一個一個考えていかなければいけないのです。

今回は、機能不全家族、家族とはどのような機能を持っているのかについてざっくりお話ししてみました。


2022.1.17

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